梅仕事⑤ 元気梅

〈 元気梅 〉名前がいいですね。 
作り方は、いたってシンプルです。梅の実からタネを外して、果肉を沖縄黒糖だけで焚きあげます。
火を入れると、美しい緑色が、黄色→黄土色→茶色→そして黒へと、みるみる変化していきます。
若い梅の透きとおるような酸味と、黒糖の深いコクと甘さが、お互いを引き立て合ってとても美味。1日のスタートに、ちょっと疲れたなと思ったときに…スプーン1杯の元気梅、よく効きます。
10年前、悲しみに暮れていた私に、同じ市内に住むフサコさん(現在91才)が「ねえちゃん、元気出して…」と届けてくださったもの。お庭でとれたばかりの青梅で、手作りされたとのことでした。瓶のふたに書かれた〈元気梅〉という文字を見て、その名前と筆跡に、凝り固まっていた私の心が、一瞬ふっと緩んだことをおぼえています。
暗闇の中にいる人間の心に届く、言葉や術(すべ)を持っているということ-教えていただいた元気梅を作るとき、フサコさんのやさしさを想います。