たくあんの炒め煮

冬に漬けた牧大根のたくあんが、まだ少し冷蔵庫に残っていたので、炒め煮にしました。
牧大根は、安曇野市の穂高牧地区でとれる堅大根で、たくあん漬けにするととても美味。信州の伝統野菜に指定されています。
半日ほど塩抜きした後で、胡麻油で軽く炒め、煮干しやタカノツメを加えて、お醤油・お酒・みりんなどで味付けし、弱火でコトコト煮ていきます。
そのままでもおいしく食べられる古漬けのたくあんを、わざわざ塩抜きし、再度味付けするという手間のかかることをするので、「ぜいたく煮」とか「大名煮」と呼ぶ地方もあると聞いたことがあります。
23年前に、NHKきょうの料理から「読者が選んだ21世紀に伝えたいおかずベスト100」という本が出版されました。
1位から順に、肉じゃが→ちらし寿司→黒豆→梅干し→麻婆豆腐→カレーライス→…と100位まで続きます。
そしてなんと、この古漬けたくあんの煮物も、ランクイン。「こんな地味なお惣菜が!?」当時、とても意外に思いましたが、同時にあたたかな心持ちになったことをおぼえています。
新鮮な野菜を無駄なく生かすための漬物作りは、風土の恵みを豊かにいただく、知恵の結晶だと思います。
さらに、その漬物を余すことなく食べきる工夫を凝らした料理も、郷土の伝統食として、情緒に満ちた庶民の食として、これからも変わらず、ずっと受け継がれていくことと思っています。