お知らせや折々の雑記

塩揉み

塩揉み

2022.6.1

どうしたらカリカリ梅の食感をうまく出せますか?と尋ねられることがあります。
新鮮な青梅を使うこと、入念に塩揉みをすること、が基本のポイントのように思います。
少しでも熟し始めた梅は、梅割りの際に“シャキッ”と気持ちよく割れず、ぐにゅ~という手応えになってしまいます。これではカリカリ梅にはなりません。
そして、最も大切な行程が、塩揉みです。
あまり欲張らず、ボウルに両手に収まるだけの青梅をとり、粗塩を入れ、手袋をはめて、身体全体を使ってぐいぐいと揉み込みます。梅の表面が塩によって傷つけられ、緑色が少し濃くなるまで、塩が溶けて梅にまとわりつくようになるまで、強く揉み続けます。実際にやられるとわかりますが、これがなかなかの力仕事です。
カリカリ梅は鮮度が命。青梅は放っておくとどんどん追熟してしまいますので、作業は待った無し、です。
若いエネルギーを素早くぎゅっと閉じ込めるような気持ちで、梅の中の時間をみずみずしい瞬間で止めるような感覚で、毎年取り組んでいます。

カリカリ小梅

カリカリ小梅

2022.5.26

健やかに実った飯田の竜峡小梅を使って、今年もカリカリ甘漬を作りました。
昨日下漬け(塩漬け)しておいた小梅を、今日は1粒ずつ梅割り器で割り、塩抜きをして本漬けしました。
塩漬けした梅からあがる水(=梅酢)の、なんと美しいこと!
今年は、天女の羽衣を二重三重と重ね合わせたような、澄んだサーモンピンクの梅酢が現れました。
固い青梅の一体どこに、こんなに初々しい、やわらかな色が宿っているのでしょう…毎年のことながら、不思議でなりません。
きれいな梅酢は、梅のご機嫌のバロメーター。美味しく漬かってくれるサインのように感じています。
私が施した下ごしらえが適切だったかどうか-“答え合わせ”をしてくれているかのようです。

山うど

山うど

2022.5.9

長く厳しい冬を乗り越えて、春の息吹とともに芽を出す野草は、エネルギーの塊です。食することで、野の生命力をいただいているように感じます。
先日、山菜採り名人の八百屋さんのご主人から、みずみずしい山うどをいただきました。
深山に自生する天然の山うどは、スーパーで売られている栽培ものに比べて、香り・くせ・苦みが強く、それが特有の美味しさ、味わいとなって、野趣に富んだ風味が生まれます。
お馴染みの調理法-茎を酢味噌和えにしようと、下処理をして湯がいたら…初夏の草木の若葉のようなやわらかい黄緑色に!
自然が生み出す鮮やかないろどりが、さわやかな季節を伝えてくれます。

新緑の季節

新緑の季節

2022.4.28

新緑が美しい季節となりました。
窓の外では、木々の若葉が芽吹き、葉を広げ、何もなかった冬枯れの林が、光あふれる緑豊かな広葉樹の林へと、日ごと変化しています。
日差しが注ぐ明るい雑木林の中では、シュンラン、イカリソウ、スズラン、キクザキイチゲ、イチリンソウ、チゴユリなど、花々が山野を賑やかにしてくれています。
若い緑に彩りを添えるのは、朱色のヤマツツジ。自生するヤマツツジは素朴で、野趣ある佇まいがとても魅力的です。
どの花も草も木も、季節をたがえずに目を覚まし、花を咲かせ、黙ってそれぞれの務めを果たす-なんと立派なことでしょう…
自然界の、この変わらない法則に、頭が下がります。

善光寺詣り

善光寺詣り

2022.4.21

「向かい干支」をご存知でしょうか。
十二支図で真向かいに位置する干支、つまり自分の干支の6つ先の干支を「向かい干支」といいます。
互いに幸を呼び合い、福を招く。守り干支とも言い、災いから身を守ってくれる。向かい干支にはそんな言い伝えがあると聞いています。酉年の泉鏡花が、自身の向かい干支であるうさぎグッズを収集していたことは、よく知られるエピソードです。申年の私の向かい干支は、寅。自分の干支と同じくらい親しみを覚え、大切に思っています。
6年に1度、丑-未の向かい干支の年回りに行われてきた、善光寺の御開帳。昨年開催予定でしたが、コロナ感染対策のため1年延期され、特例で史上初の寅年開催となっています。
寅年は私にとって特別な年-という訳で、初めて回向柱に触れに、善光寺へ行ってきました。朝の境内は、心安らぐ祈りの場所でした。

春爛漫

春爛漫

2022.4.9

安曇野では桜が開花、我が家ではレモン色のヒカゲツツジが、見頃を迎えています。待ちに待った、爛漫の春です。

先日、京都に住む友人から、小包が届きました。
小さな木箱を開けると中には、隙間なく見事に詰められた、春色の干菓子が。これがあまりにきれいだったので、いくつかお皿に取り出して、並べてみました。
さまざまに表現された桜の花や、梅、つくし、早蕨、蝶、橘、柳、青楓、などなど… 
どれもこれも素敵な意匠で、色合わせがとても美しい。シンプルで柔和な造形、季節感あふれる色彩、繊細で丁寧な仕事に、艶やかな可愛らしい春を感じます。
楽しい和菓子の世界から、目にも口にも美味しい春を、いただきました。