お知らせや折々の雑記

2つのピッケル

2つのピッケル

2021.12.24

山男だった義理の祖父(明治生まれ)と父(大正生まれ)が、二代で愛用し使い込んだ、2つのピッケルです。
使い手の命を預かる大切な道具は、余計なものが一切削ぎ落とされ、究極のかたちをしているように思います。
機能性をとことん追求して辿り着いたものには、たとえそれが美を追求して作られたものでなくとも、自然と丈夫で健やかで潔い美しさが宿ると思っています。
遺されたピッケルのひとつは、大正時代のスイス製のもの。熟練職人によって作られた、アノニマス・デザイン(無銘の美)であると感じます。
もうひとつは、山内(ヤマノウチ)ピッケル。古い山男なら知らぬ者はいない-稀代のピッケル鍛冶師山内東一郎(1890-1966)の晩年の作品です。
祖父が鉄を扱う仕事をしていた縁があり、仙台に住む山内氏に依頼して制作してもらったもので、出来上がってきたとき、あまりの嬉しさに、布団の中で大事に抱いて眠った-というエピソードを聞きました。
剱岳、白馬大雪渓、涸沢、槍・穂高連峰、富士山など…雪氷期の登山や岩登り、山スキーには必ず携行し、二人を常に守ってくれた2つのピッケル。今は、私が見守られているような気がしてなりません。
まもなく義父の一周忌。
やさしかった義父を想います…

雪景色

雪景色

2021.12.18

今朝の安曇野、うっすら雪が積もりました。
数cmといったところでしょうか…気温もぐっと冷え込んで、つかの間の美しい雪景色となりました。
寒くなるとやってくる野鳥たち。カラ類が群れをなしてやって来て、慣れた個体は私の手から直接餌をついばむほどになるのですが、今年は一向にその気配がありません。例年になく野鳥の数が少なく、一体どうしたんだろう?と、さみしい思いで心配していました。
雪の日の朝…餌台をめざして林の中を元気よく飛び交う、シジュウカラやヤマガラたちの姿が!ホッと安堵の、うれしい朝となりました。

松前漬け

松前漬け

2021.12.16

父から引き継いだ、わが家の味です。
昆布、するめ、人参、ごぼう、干し大根、数の子、唐辛子が入って、なかなか具だくさん。昆布やするめは、キッチン鋏で細くカットし、人参とごぼうは、千切り。干し大根は、たくあん作りの際に、固大根を拍子切りにして干したものを、準備しておきました。ここに、塩抜きしてほぐした数の子と唐辛子少々を加えます。
乾いているものは水洗いしたり、戻したりして、柔らかい状態にしてから、全てをざっくりと混ぜ合わせ、お醤油とお酒とみりん-1:1:1で漬け込むだけです。
山国ならではの具材がいくつか入り、田舎の味ですが…海の幸と山の幸が見事に調和して美味。日々のおかずとして、またハレの日の祝い膳として、さりげなく食卓が華やぐ一品になり、気に入っています。

八百屋さん

八百屋さん

2021.12.10

堀りたての生姜で、佃煮を作りました。
初夏の新生姜を使っても美味しいのですが、佃煮の強い味付けには、初冬の根生姜がより良いような気がして、この時期に作りおきしています。
作り方は、八百屋さんの奥さまのミエコさんから。引っ越してきて間もない頃からの、大切な定番レシピです。
八百屋さんに行くと、走りや旬が、一目でわかります。そして、旬の食材の美味しい調理方法や適切な加工方法を、ご主人がよく心得ていらっしゃり、とても勉強になります。
地元の味自慢腕自慢の母さんたちが集まる八百屋さんにはまた、たくさんの生きた情報も、自ずと集積しています。知恵と工夫に満ちた情報はいつも新鮮で、暮らしを豊かに、楽しいものにしてくれます。

野沢菜漬け

野沢菜漬け

2021.12.9

日本を代表する漬物のひとつ、信州の野沢菜漬け。
信州人には、冬の食卓に欠かせない一品です。
最近、野沢菜と白菜を交配した「かあちゃん菜」という漬け菜が人気のようで、私も昨年切漬けで試してみました。
確かに、やわらかくて食べやすかったのですが…何度か霜にあってやわらかくなった、在来種の食感がやはり“野沢菜らしい”と感じられたので、今年は今までどおりのお菜を使って漬けました。
ここは穂高温泉郷、中房温泉のお湯が引かれており、凍える思いでお菜洗いをすることがなく、ありがたく思います。
そして、温泉のお湯で洗うことで、お菜がやわらかく、おいしくなるのでは?と、その効用も期待しています。
広葉樹の葉っぱが落ち切ったのを見計らって、屋根の上の落ち葉下ろしと雨樋の掃除も、無事終えることができました。これでホッとひと安心、ありがとうございました。

『おおきなかぶ』

『おおきなかぶ』

2021.12.3

大きな、立派な、聖護院蕪と聖護院大根-お客様が届けてくださいました。畑から抜いてこられたそのままの姿かたちを見て、思わず、子どもの頃に親しんだ、この絵本を思い出してしまいました。
福音館の長年に渡るベストセラー、きっと読まれた方も多いのではないでしょうか。
「うんとこしょ、どっこいしょ」と、くり返されるかけ声は効果的印象的で、今でも記憶に留めています。
お話もさることながら、彫刻家佐藤忠良の挿絵が素晴らしい。
ページをめくるごとに惹き込まれる、魅力的な構図。登場人物たちの装いの、なんとお洒落で素敵なこと。彫刻家らしい躍動感あふれる表現力、素描力が随所に感じられます。
幼い子どもだけでなく、大人になって読んでも楽しめる一冊、懐かしさとともに改めて感銘を受けました。

元気で健やかな蕪と大根は、ぽってりと甘く、温かいお料理でおいしくいただきました。